「バラキ」(原題:COSA NOSTRA/THE VALACHI PAPERS)
1972年(イタリア=アメリカ)
監督:テレンス・ヤング
出演:チャールズ・ブロンソン、リノ・ヴァンチュラ、ジル・アイアランド
マフィアの構成員でありながら、コーザ・ノストラの実態をアメリカ議会(バラキ公聴会)で初めて証言したジョセフ・バラキの証言を基に映画化した作品。
主演は男の中の男であるわれらがチャールズ・ブロンソン!
主演は男の中の男であるわれらがチャールズ・ブロンソン!
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「バラキ」のあらすじ(ネタバレあり)を解説
アトランタ連邦刑務所に収監されていたバラキ(チャールズ・ブロンソン)は数回に渡り刺客に命を狙われる。
それはマフィアの大物ボス、ヴィト・ジェノベーゼ(リノ・ヴァンチュラ)の差し金だった・・・。
若い頃、街のゴロツキにすぎなかったバラキは刑務所で知り合ったギャップ、ベンダーの紹介でマフィアの大ボス、サルヴァトーレ・マランツァーノの幹部ガエタノ・レイナのドライバーとして働くことになりマフィアの世界に足を踏み入れる。
その後、働きを認められコーザ・ノストラへの入会が認められたバラキは正式にマフィアの構成員となる。
マランツァーノが暗殺され、その後もマフィア内での権力闘争が激化、そんな中マフィアの大ボスに上り詰めたジェノベーゼだが、トニー・ベンダーの陰謀で麻薬所持の罪で逮捕されてしまう。
疑心暗鬼に陥っていたジェノベーゼは自分をハメたのがバラキだと思い込み、バラキの首に二万ドルという多額の懸賞金をかけて命を狙っていたのだ。
忠誠を誓った組織に裏切られたバラキは、自分と家族の身の安全の保証と引き換えに、コーザ・ノストラの全貌をFBIに告白するのだったが・・・。


「バラキ」の概要解説
映画はバラキの回想形式で進んでいく。
実名で登場するマフィアの大物やコーザ・ノストラの歴史・実態が解り易く忠実に再現されている。
実名で登場するマフィアの大物やコーザ・ノストラの歴史・実態が解り易く忠実に再現されている。
原作は全米でベストセラーとなったピーター・マーズの「マフィア/恐怖の犯罪シンジケート」。
この映画化権を買い取った監督のテレンス・ヤングは様々な映画会社・プロデューサーに話を持ちかけたが、劇中に登場するマフィアのボス、ジェノベーゼが獄中で存命中だったため報復を恐れて映画製作は見合わされていたが、ジェノベーゼとバラキが相次いで亡くなったことでついにクランクインする。
この映画化権を買い取った監督のテレンス・ヤングは様々な映画会社・プロデューサーに話を持ちかけたが、劇中に登場するマフィアのボス、ジェノベーゼが獄中で存命中だったため報復を恐れて映画製作は見合わされていたが、ジェノベーゼとバラキが相次いで亡くなったことでついにクランクインする。
ニューヨーク5大マフィアのひとつコロンボ・ファミリーからの脅迫に遭いながらも撮影場所をローマに移して完成に漕ぎつけたといういわくつきの作品だ。
ちなみに本作は「ゴッドファーザー」の公開5か月後に公開されている。
「バラキ」は徹底したリアルリズムを追求
街のゴロツキにすぎなかったバラキは、刑務所で知り合ったギャップらの紹介でマフィアの大ボス、サルヴァトーレ・マランツァーノの幹部ガエタノ・レイナのドライバーとして働くことになりマフィアの世界に足を踏み入れるわけだが、
本作では
ジョー・マッセリア、サルヴァトーレ・マランツァーノ(マッセリアとマランツァーノはカステラマレーゼ戦争で勢力争いをしていた。後に2人とも暗殺される) ➡ ラッキー・ルチアーノ(売春容疑で逮捕されイタリアに追放される)➡ ヴィト・ジェノベーゼ(抗争激化のためイタリアへ) ➡ アルバート・アナスタジア(ジェノベーゼに暗殺される) ➡ 再びジェノベーゼ
ジョー・マッセリア、サルヴァトーレ・マランツァーノ(マッセリアとマランツァーノはカステラマレーゼ戦争で勢力争いをしていた。後に2人とも暗殺される) ➡ ラッキー・ルチアーノ(売春容疑で逮捕されイタリアに追放される)➡ ヴィト・ジェノベーゼ(抗争激化のためイタリアへ) ➡ アルバート・アナスタジア(ジェノベーゼに暗殺される) ➡ 再びジェノベーゼ
・・・というマフィアの歴史、権力の変遷が非常にわかりやすく描かれている。
余談だが、「ゴッドファーザー」において理髪店で暗殺されるベガスのギャングのボス、モー・グリーンの暗殺場面はアナスタジアの暗殺がモチーフになっているそうだ。
実話を元にドラマ(フィクション)として描かれた「ゴッドファーザー」に対し、この「バラキ」は登場する主要な登場人物や事件がすべて本物・実名で事実にほぼ忠実に描かれでいる。
家族愛、人間模様をドラマとしてうまく描いた「ゴッドファーザー」にはドラマ的見応えは遠く及ばないが、当時究極のタブーとされてきたマフィアの内情を実話ベースで克明に描いたことでドキュメンタリー的な生々しさは秀逸である。
「仁義なき闘い」が好きな人は好きな映画かも。


「バラキ」で筆者が一番印象に残ったのは
リノ・ヴァンチュラ演じるマフィアの大ボス、ジェノベーゼがダントツで印象に残っている。
劇中描かれるジェノベーゼはいやらしいほど狡猾で執念深い男だったが、憎々しい悪役を多く演じてきたリノ・ヴァンチュラが演じ、しかも日本語吹替えの声が森山周一郎とくれば「そりゃそうだよね」って感じ。
実際の彼も性格は残忍で狡猾、権力欲が旺盛だったと言われている。
「バラキ」の劇中で、あるキャバレーの人気の踊り子を自分のものにするために彼女の夫を部下に殺害させているが(映画内ではバラキとギャップが殺害している)、ジェノベーゼが一時期イタリアに逃亡している間にバラキの親友ギャップが上記のジェノベーゼの女に手を出してしまう。
怒り狂ったジェノベーゼはギャップをひと思いに殺さず部下に命じて彼の男性器切り取らせてしまう・・・。
直接的な生々しい残酷描写は出てこないものの、暴れてもがき必死に抵抗するギャップを複数のジェノベーゼの部下が押さえつけてナイフで男性器を切断する場面は正視していられない。
直接的な生々しい残酷描写は出てこないものの、暴れてもがき必死に抵抗するギャップを複数のジェノベーゼの部下が押さえつけてナイフで男性器を切断する場面は正視していられない。
病院へ連れて行こうとするバラキに「殺してくれ」と懇願するギャップ・・・バラキが親友に銃でトドメをさす描写は非常に心に刺さる。
余談だが、上記のような恐ろしいマフィアの大ボスだった彼だが、プライベートでは温厚で紳士的、近隣住民と積極的に交流し協会にも多額の寄付を行い、自らの子供たちは敬虔なカトリック学校に通わせて犯罪に縁のない道を歩ませ息子は町議会議員、娘は教師になっている。
冷酷で残忍な彼と温厚で紳士的な彼、どちらが本当の彼なのか・・・人間は本当にわからないものだ。