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バタリアンの概要
1985年に公開された「バタリアン(The Return of the Living Dead)」。
軍が秘密裏に開発した「トライオキシン245」という薬品で死者が甦り人間を襲うという内容で、
ゾンビ映画の金字塔であるジョージ・A・ロメロ監督作の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のパロディ。
「人肉を食らう」➡「脳みそを食べる」
「ノロノロ歩く」➡「全速力で走る」
「頭(脳)を破壊すると倒せる」➡「脳を破壊しても死なずほぼ無敵」
と「ゾンビの3大お約束」を見事に覆している。
監督のダン・オバノンは「エイリアン」「スペースバンパイア」「トータルリコール」等の脚本を手掛けているが、本作「バタリアン」で広く知られるようになった。
簡単なストーリー紹介
アメリカ合衆国のケンタッキー州ルイビルという田舎町にある「ユニーダ医療品会社」で働き始めたフレディは先輩社員のフランクから会社の地下倉庫に、軍の手違いにより配送されてきたゾンビの入ったドラム缶が保管されていることを知らされる。
半信半疑なフレディを連れて地下に降りたフランクがゾンビの入ったドラム缶を叩いたところガスが噴出、それを浴びた二人はその場に倒れてしまう。このガスは軍が秘密裏に開発した「トライオキシン245」という死者を甦えらせる薬品で、会社内に保管していた死体(軍の弾道試験用)がそのガスを浴び甦ってしまう。
意識を取り戻したフランクとフレディは、死体保管用の冷蔵庫内でゾンビ化した死体が暴れているの見つけ社長のバートを呼び出し、3人がかりでゾンビを取り押さえロメロの映画同様にゾンビの脳を破壊するが死なず、バラバラに切断したゾンビをバートの友人アーニーが営む葬儀社に運び込む。
アーニーに秘密裏に処理することを依頼し焼却炉でゾンビを焼き払うが、焼却炉の煙突から立ち昇った煙が雨雲となりトライオキシンの成分を含んだ雨が墓地に降り注ぎ墓地の死者が次々ゾンビ化する。
そんな中、トライオキシンを浴びたフランクとフレディにも変化が現れる。
意識はあるが瞳孔は開き、体温は室温と同じ、おまけに死後硬直と同じ症状が現れ・・・。
サントラ①「トライオキシンのテーマ」
バタリアンといえば「トライオキシンのテーマ」を思い出す人は多いのではないだろうか?
冒頭のドラム缶のガスが漏れて中のゾンビが溶け出すシーンと、焼却炉から煙が立ち上り雨が降り出すシーンで流れるあの曲だ。
曲の正式名称は不明、ただ「トライオキシンのテーマ」と呼ばれていて、正式なサントラ盤にも収録されていないレアな曲だ。
筆者は某オークションでこの「トライオキシンのテーマ」の入ったバタリアンとバタリアン2サントラ2枚組の海賊版CDを手に入れたが、入手するのはなかなか難しいと思う。
サントラ②「トゥナイト」~バタリアンのテーマソング
バタリアンのテーマソング「トゥナイト / Tonight (We’ll Make Love until We Die)」。
フレディの不良仲間の1人でパンクな赤毛のオネエサン、トラッシュのテーマ曲と言ってもいいかも。
アメリカのシンセポップグループ「SSQ」というバンドの楽曲で、“マドンナの二番煎じ”と揶揄させたボーカルのステイシーQの甘ったるいセクシーボイスが印象的。初めてこの歌聞いた時、筆者は「マドンナの歌か?」と思ったほど歌声がマドンナに似ている。
余談だが、ステイシーQは1986年にソロで「トゥー・オブ・ハーツ/TOW OF HEARTS」という曲をリリース、全米3位となるが残念ながらヒット曲はこの1曲のみである。
衝撃のエンディング
さて、バタリアンと言えば何と言ってもあの衝撃なエンディング。
追い詰められた主人公らが最後に頼ったのが軍だった。タールマンが入っていたドラム缶に記載されていた軍の緊急連絡先へ電話するとトライオキシンの開発担当である陸軍のグローバー大佐へ繋がる。
軍から対ゾンビの対応策が前もって準備されていたことを知らされ安堵する主人公らだったが・・・
まさかの核ミサイルで街ごと破壊して証拠隠滅&登場人物すべて死亡(たぶん)というシュールなラストを迎えるのだった。
ラストでルイビルへ核攻撃をした際に使用された大砲は、実際に配備されていたことがある「M65 280mmカノン砲」という長距離砲らしく、実際に核実験にも使われたこともある。
ちなみにこの「M65 280mmカノン砲」は、1963年には配備から退役しており射程も30㎞ほどしかなかったそうだ。
最後に
「冒頭のドタバタ劇」➡「主人公らの行動が裏目に出てどんどん事態が悪化していく」➡「救いのないシュールなラスト」とメリハリの利いた捻りのある展開になっているのは脚本家出身のダン・オバノンが監督ということもあるのだろう。
頭を破壊しても死なない、バラバラにしても死なない、では焼いてしまえばいいだろうと焼いてみたらさらに事態を悪化させるという、「バタリアン」はまさに最強のゾンビといっても過言ではない。
ラストの核攻撃後にまた雨が降り注ぐシーンで終わるが、その後の展開(ゾンビ禍がさらに拡大するかしない)に関する解釈は視聴者に任せるといったところだろうか。
とにもかくにもその後のゾンビ映画に新しい新解釈を与えた衝撃作であることには変わらないだろう。