ホラー映画「ハウリング」徹底解説 ネタバレ 感想 裏話

1981年 アメリカ
監督:ジョー・ダンテ
脚本:ジョン・セイルズ、テレンス・H・ウィンクルス
製作:マイケル・フィネル、ジャック・コンラッド
製作総指揮:ダニエル・H・ブラット、スティーヴン・A・レイン

出演者:ディー・ウォレス、パトリック・マクニー、デニス・デューガン、ジョン・キャラダイン、クリストファー・ストーン、ベリンダ・バラスキー

あらすじ(ネタバレあり)

人気女性ニュースキャスターのカレン(ディー・ウォレス)は、連続猟奇殺人事件の犯人エディにポルノショップへと呼び出された。エディは彼女の目の前で得体の知れないものに姿を変えて襲い掛かってきたが、寸でのところで、警戒していた警官が駆け付け発砲、エディは銃弾に倒れる。

カレンは一命をとりとめたものの、精神疾患によって仕事も私生活も破綻してしまう。心療内科医ワグナーの勧めで「コロニー」と呼ばれる保養所へ夫のビルとともに療養に向かうが、その場所こそ人狼の巣窟でワグナー自身も人狼族であった。
そしてビルはコロニーの住人の女マーシャによって人狼族の仲間にされてしまう。彼女自身も狼女でありエディの姉であった。

一方、エディの事件を探るカレンの同僚のクリスとテリーは「死体安置場から消えたエディの死体」「エディの部屋に飾られていた狼人間の絵」・・・など調査を進めるうちに狼人間の存在が浮かび上がってくる。

カレンからの電話で窮地を察したテリーは、恋人クリスが仕事で同行できないということで単身でコロニーに向かうがエディによって惨殺されてしまう。
一刻の猶予もないことを悟ったクリスはカレンを救出に向かう。その手には銀の弾丸が装填されたライフル銃が握りしめられていた。

コロニーの集会場に連行されたカレンは人狼への仲間入りをするように申し渡されるが拒否、鷹派のマーシャらに殺されそうになるがそこにクリスが駆け付ける。
初めは「銀の弾丸なんて迷信だ・・・」とバカにしていた人狼たちだったが、1人がクリスに撃ち殺されたことで全員集会場に押し込められてクリスに火を放たれる。

人狼の追撃から命からがら逃げ帰ったカレンとクリス。カレンはこの事実を世間に公表することを決意し、生放送のテレビカメラの前で人狼に変身するがクリスによって撃ち殺される。
この放送で町中が騒然となる中、町のレストランのテレビでその顛末を眺めながら不敵な笑みを浮かべる女性がいた。それはコロニーでクリスによって焼き殺されたはずのマーシャであった。

概要・解説(ネタバレあり)

「グレムリン」「ピラニア」でもお馴染みのジョー・ダンテ監督の大出世作。
この映画はそれまでの「満月により変身する(満月の日しか変身しない)」という人狼モノのお約束を完全に覆す「怒りにより人狼に変身する」という新たな解釈を加えた人狼映画。

満月でなくとも自由に変身できる狼人間というアイディアは面白かったし、皮肉の効いたクライマックスにも思わずニンマリさせられる。
ホラー・ファンのツボを心得たダンテ監督の演出もサービス精神旺盛だ。 

原作はゲイリー・ブランドナーの書いたホラー小説。もともと原作にほぼ忠実な脚本を書き上げたが映画的な面白みに欠け、ダンテ監督と「ピラニア」(78)で組んだ脚本家ジョン・セイルズが一から書き直した。

そして本作の人狼への変身シーンは当時若干21歳だったロブ・ボッティンが担当。

彼は54回アカデミー賞で新設されたアカデミーメイクアップ賞の初代受賞者となったリック・ベイカーの一番弟子で、リック・ベイカーが親友ジョン・ランディスの「狼男アメリカン」の仕事を受けたために「ハウリング」を愛弟子のロブ・ボッティンに任せた。

「5分前は人間だった」のキャッチコピーの通り、本作の最大の見せ場はリアルな変身シーンで「変身で顔が歪むカット」は特殊メイクと機械操作のダミーで、「筋肉が痙攣するカット」はバルーンを使った特殊効果で表現した。
「顎がぐっと伸びるカット」は師匠リック・ベイカーが油圧式の機械操作で行ったのに対し、予算のないロブ・ボッティンは狼のヘッドに自分の手を入れて直接アゴの部分を押し出した。

「ワンカットで変身」という触れ込みはさすがに嘘であったが、今までの人狼映画ではオーバーラップ等で表現していた変身シーンをリアルな変身描写で見事に表現した。
本作の試写を見たリック・ベイカーとジョン・ランディスはその出来の素晴らしさに驚き「狼男アメリカン」の撮り直しを行ったほどだった。

ボッティンは「遊星からの物体X」「ロボコップ」「トータルリコール」などその他数多くの映画でもその手腕をいかんなく発揮している。

「ハウリング」裏話

①主人公カレン役のディー・ウォーレスはスピルバーグの「E.T.」の母親役で知られる女優。「サランドラ」「クジョー」「クリッター」「ハロウィン」などホラー映画への出演がとても多い。
カレンの夫ビル役を演じているのは本作の共演がきっかけでディー・ウォーレスと結婚した俳優クリストファー・ストーン。ちなみに、2人は「クジョー」でも夫婦役を演じている。97年には心臓発作の為にクリストファーとは死別しているがその後もストーン姓を名乗っている。

②本作は予算の関係上人狼の全身着ぐるみを作れなかったそうで、ストップモーションアニメーション(コマ撮り)やアニメーションで誤魔化された箇所がいくつか存在する(人狼になったマーシャとビルの交尾シーンとラストカレンを取り逃がした人狼らが遠吠えするシーン)。
全体的に映画の出来が良いだけに、このアニメーションによる誤魔化しはいただけなかった・・・ぜひ十分な予算でこの作品を作らせてあげたかったですね。

③コーマン映画の常連俳優だったディック・ミラーが本屋の主人役で顔を出している。ディック・ミラーといえば、「ターミネーター」でシュワちゃんに撃ち殺されるガンショップのオヤジといえばわかる人も多いのではないだろうか。その本屋のお客役でモンスター映画の伝道師フォレスト・J・アッカーマンが登場したり、50年代のB級映画スター、ケネス・トビーが冒頭で初老の警官役を演じていたりと、B級映画マニアには嬉しいサプライズがいっぱいだ。

④狼女マーシャを演じたエリザベス・ブルックス(木の実ナナに似てるんだよな~)は本作で有名になり、何本かB級映画の悪女役を演じたが97年にガンのため亡くなっている。
余談だがラストに映されたステーキハウスのシーンで、死んだと思われたマーシャが現れ他の客のおっさんにハンバーグをおごってもらうのだが、焼き加減を聞かれ「レアで・・・」(さすが狼)と答えるがエンドロールが流れている間、丹念に焼かれるハンバーグ・・・レアじゃないじゃん!!とツッコミを入れつつ映画は終わるのだった・・・(笑)